柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」
2008-03-22


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柳宗玄「サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選6)」八坂書房(2005年)

ちょっと値の張る本なので購入に躊躇していたら、本書と著作選5 が、某大手ネット古書店で各3,150円で、売られているのを発見。2冊とも購入してしまいました。

著者は、柳宗玄(やなぎ むねもと、1917- )。美術史家であり、柳宗悦の次男です。

本書主要部の「サンティヤーゴの巡礼路」は、

『サンティヤゴの巡礼路』世界の聖域16、講談社、1980年

の再録です。著者は、その後も、幾度かサンティヤーゴ巡礼路を訪れているとのことで、写真は全て著者自ら撮影したものに差し替えられています。

著者の視点は現代よりも、12世紀当事の巡礼の姿を捉えることにあるます。現代の打ち捨てられた旧巡礼路や廃墟となった建物をたどりながら、サンティヤーゴ巡礼最盛期の巡礼たちの姿をそこに見ています。

当時の資料や教会の装飾像等を基に、人々が大きな苦難を耐えながら巡礼する姿を描き出しています。多数の写真や図版も、読者が、著者とともに12世紀のサンティヤーゴの巡礼路に思いを馳せることを助けてくれます。

本書の後半には、有名なカリクストゥス写本(Codex Calixtinus)(12世紀)の中から『サンティヤーゴ巡礼案内書』の全訳が付されており、これもまた読者に12世紀の巡礼者の姿を彷彿とさせてくれるものです。

読者を12世紀と現代の往還の旅に誘う本書は、定価で買う価値が十分ありました。

【関連文献】
歴史学研究会(編集)「巡礼と民衆信仰」青木書店(1999年)

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